腕時計のムーヴメントの真実~オメガもブライトリングも中身は同じ?
腕時計は大人のステータス。最近ではそうでもありませんが、一昔前までは大人になったら一本は良いものを持つべきとされてきました。
ブランドや機能などについてはこだわる方も多いでしょう。しかし、その中身であるムーヴメントについてまで考えることはあまりないかと思います。
ムーヴメントだけをつくるメーカーが存在する
それぞれのメーカーが自社で独自のムーヴメントを作っている。そう考えている方がほとんどでしょう。しかし、すべてを一貫して自社で作ることのできる所はとても限られています。
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全ラインナップを自社製ムーヴメントで展開しているメーカーになると、ごく一握りです。あのオメガやブライトリング、パネライにフランクミュラーといった名門ブランドすらすべてを自社のものだけでまかなうことができていません。
では、どこで作っているのでしょう?
実はムーヴメントだけを製造するメーカーが存在しています。
スイスの時計業界は早い段階から分業制になっていた
世界有数の時計王国といえばスイスです。ロレックスもパテックフィリップもオメガもみんなスイスメーカーです。
もちろん、すべてを一貫して作ることのできるマニュファクチュールと呼ばれるメーカーも多く存在していますが、半数以上は分業制を採用しています。
ケースだけを作る、文字盤だけを作る、そしてムーヴメントだけを作る。さまざまな役割を持った工場が多く存在しており、これらを組み合わせて腕時計を組み立てるのが、一般的に知られている腕時計メーカーでした。
時計という道具が誕生し、かなり早い段階からこの分業制が成立していましたので、いわばこれがスイス時計業界の伝統ともいえるでしょう。
世界最大のムーヴメントメーカー・ETA
▲ETA社の汎用ムーヴメント
ETAというメーカーをご存じでしょうか?一般的にはあまり知られていませんが、時計業界では知らない人はいません。
このETAこそが世界最大のムーヴメントメーカーです。オメガやブライトリング、チュードル、パネライなども同社のものを使用しています。意識はしていなくても、時計好きな方であれば一度は触れたことがあるのかもしれません。
各メーカーが組み上げる段階で多少手を加えることはありますが、別メーカーのまったく違うタイプのものであっても、中身は同じものであることも決して珍しいことではありません。
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自社ムーヴ開発戦争の中でも必要とされるETA
近年、高級時計の世界で生き残るための重要なポイントとなっているのが自社ムーヴの開発です。技術が進歩したことによって、安価に高精度のムーヴメントを作ることができるようになりました。
低価格な時計でありながら、高精度の新興ブランドも多くなり、名門ブランドだからといってあぐらをかくことはできなくなってきました。
そんな中、あえて高級時計を消費者に選ばせるには、ブランド力を強化する必要があります。その手段の一つが、自社一貫生産が可能なマニュファクチュールになることです。
ほぼすべてのモデルでETAに頼っていたブライトリングやフレデリックコンスタントなどでも開発が進み、ここ数年でマニュファクチュールと呼ばれるようになったメーカーは一気に増えました。
では、汎用ムーヴは必要とされなくなってしまったのでしょうか?そんなことはありません。相変わらず必要とされています。
一気にシンプルな3針モデルからデイトモデル、クロノグラフモデルなどすべてを開発することはできません。また、大量に生産するにはかなりのコストがかかってしまいますので、一部のフラッグシップモデルに採用するのが限界です。
そこで活躍してくれるのがETAです。安価でありながら高精度。さらに大量に供給することができます。
自社一貫生産のフラッグシップモデルでブランド力を高め、ETAを搭載した普及モデルで多くの利益を生み出す。これが今日の高級時計メーカーの一般的な経営スタイルとなっています。
中身が同じなのにどうしてこんなに価格が違うの?
▲低価格モデルで人気のZENO。中身は高級ブランドと同じ?
同じETA製の汎用ムーヴメントを使用したモデルであっても、その価格には大きな違いがあります。
イタリアの高級ブランドであるパネライと、スイスの新興ブランドのゼノ。同じムーヴメントを使用しているモデルであってもその価格差は数十万円にもおよびます。どうしてここまで大きな差が生まれてしまうのでしょう?
もちろん、ケースや文字盤の素材や装飾などに違いはあります。しかし、基本的な時計としての性能はほぼ同等であるといえるでしょう。
この差はやはりブランド力にあります。バッグや財布、アクセサリーなどにおいても、素材や機能は同じだからといって有名ブランドとノーブランドで同じ値段であるわけがありません。
これは腕時計においても同じことが言えるでしょう。もはや単に時を知るための道具ではなく、高い趣味性をもったものへと変化しているのかもしれません。
腕時計の中身について考えてみましたが、いかがでしょう?少し見方が変わったのではないでしょうか?
By チリペッパー眞木
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